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「出口のない海 」 松尾しより  

松尾しよりという漫画家さんが好きで昔はよく読んでたのですが、マーガレット系の雑誌は読まなくなってしまったのと戦争に引き裂かれる可哀想な夫婦の話(空と海のあいだ)があまりにも悲しかった為にこの人の作品を避けるようになってしまった。
最近、ハーレクイン系の雑誌でまた作品を読む機会があって、この人の絵がやっぱり好きだわと、読む機会がなくなってた間の作品を探して読んでみた。
その中の1冊が「出口のない海」。
第二次世界大戦で空ではなく海の特攻の回天の搭乗員の青年とその恋人との話。
松尾さんは近年は戦争ものを割りと描かれてるようで、この作品も・・・読む前から少し嫌な予感・・・。
これは松尾さんのオリジナル作品ではなく別に小説の原作があるのをコミカライズしたもの。
もう随分前に市川海老蔵主演で映画化されてその頃に出版されたものみたいです。
テレビでも放映されたみたいなんですけど・・・見たような見てないような・・・海老蔵が好きでないうえに恋人役の上野樹理も好きじゃなかったので見なかったのかもしれない。
原作も映画も知らないので、私が知ってるのは松尾さんのだけ。
主人公、並木浩二と恋人美奈子との恋を中心に描かれてます、掲載されたのが女性誌だったのでラブストーリーに重点を置いた作品なのかも。
嫌な予感は的中で途中からは涙涙・・・昔と違い年取った分だけ涙腺が馬鹿みたいになってるんだった。
救いがない・・・。
救いがあってほしいのは読者の願望でしかないんだけど、あまりも読んでて辛かったので。

出撃前の最後の帰省(美奈子は最後の帰省だとは知らされていない)を終え、汽車に乗った浩二のもとに美奈子が駆けつけ浩二の身を心配するのですが、浩二は「危険なことは何もしていないから安心しろ、今度まとまった休暇が取れるからそのときはゆっくり逢おう」と言います。
泣きながら自分を心配してくれる美奈子の涙を止める為なら何だってする、嘘だってつく・・・それがいいか悪いかは判らないけど浩二は浩二なりに美奈子を大切に思ってるからなんでしょうね。
見送りに来た彼女に「もう二度と逢えない」とは言えないですよね。
二人にとってこれが最後になるわけですが、何もしらない美奈子は「いってらっしゃい、帰ってきてね」って言う。
走り出した汽車の中で浩二が泣く、浩二の言葉を信じて笑って見送る美奈子の姿が漫画だけに読み手にも判るわけで・・・何というかもうね、言葉にならない。

結局浩二は出撃ではなく訓練中の事故で命を落してしまうわけですがこれもまた理不尽・・・回天は欠陥が多かったみたいで訓練中の事故死も割りとあったみたいです。
脱出装置もない(特攻は帰還が前提ではないので中から開けることはできない)密閉空間なのでだんだん酸素もなくなってくる状態の中で浩二は美奈子の写真の裏に手紙を書きます。

「美奈子へ。
嘘をついてすまない。
きみに嘘ばかりついてしまった。
まだ酸素はある俺は大丈夫だ。
ただ外が気になる いまは昼なのかな夜なのかな
空の色が気になる。
きみと見た四季の空は綺麗だったね。
美奈子御願いだ 俺の目になってくれないか?
たとえば 夕暮れの美しさを 夏の海のきらめきを
どうか俺のかわりにみてほしい
きみの心に俺を住まわせてほしいんだ
そして一年がすぎたら俺を忘れて下さい
子供や孫に囲まれて
どうか百才まで生きてください」
最後の一文は酸素がなくなってきて意識が朦朧としてきてるので乱れています。
それでも浩二は生きることを諦めないのですが、残酷な最期を迎えてしまいます。
終戦後、その遺書を美奈子は受け取ります。

浩二は大学の国文科の学生だったので作品の中で美奈子との間で万葉集の和歌になぞらえての場面なんかもありそれも切なく悲しかったです。
浩二亡き後の美奈子は浩二の遺志を継ぐべく同じ大学の国文科に進学するのですがそれからどうしたのかはこの作品では描かれていません。(家が貧しくて勉強したくてもできないという設定だったと思うのですがあの当時大学までどうやって進学したんやという疑問は残るけど)
最後は思い切り時が経って美奈子はおばあさんになっていたので。
なので浩二の願った通り母、おばあちゃんになったのかは判りません。
遺書に子供や孫に囲まれてというくだりがありますが、そこに誰かの妻となりという文面があえて含まれていない(子供や孫が出てくる時点で誰か別の人と結婚するのは判りきった話ではあるのですが)ところに浩二の切ない気持ちが含まれているような気がしてならない。
好きな人を幸せにし共に人生を歩くのは自分でありたいのにそれを別の人間に委ねないといけない苦しみってどれだけのものか。
この物語はフィクションですがあの当時こうした人達がたくさんいた。
戦争というものに人生を狂わされた人達が。

美奈子の浩二亡き後の人生は原作では描かれているのか、一度原作も読んでみようかなと思ってます。
でも果たしてあんな優しく悲しい手紙を遺して死んでいった人のことを忘れて違う人の手を取り生きて行けるのか・・・行けない気がする。

竹内まりやの「返信」という歌がとても好きだったのですが映画「出口のない海」の主題歌だったんですね。
病気、もしくは事故なんかで好きな人をなくしてしまったという歌なのかなぁと思っていましたが、美奈子からの浩二の手紙への返信という歌だったのかと今回初めて知りました。
もう聴けないなこの歌は、悲し過ぎて。

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